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意味怖話を作ってみた4

  • 2011-12-25 (日)

今回は短編小説っぽい作りを意識してみました。
長いので暇なときにゆっくり読んでみてください。

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ジリリリリ

黒電話の音が響いた。体がびくりと震える。まさか。一瞬の期待のあと慌ててそれを打ち消す。そんなはずないか。波打った気持ちを静め携帯の着信ボタンを押した。

「ああ、妹さんだね。お姉さんの下宿先の大家です。いま遺品整理の人がこの部屋を片付けていってね。お姉さんの荷物がまだ少し残っているから、いつでもいいから取りにおいで。」

******

姉が亡くなってから、いや、正確には殺されてからだけれど、もう2週間になる。親元を離れ、東京で一人暮らしを始めた矢先のことだ。姉が下宿先に選んだのは年老いた夫婦が運営をしている下町の古びた貸アパートだった。もう少しきれいなところに、と周囲は反対したのだけど、姉はそのアパートの純昭和的なたたずまいがとても気に入ったらしい。特に姉の心を動かしたのはその部屋に置かれていた黒電話だ。

「黒電話はええもんや。ダイヤルを回すカリカリいう感触も、妙にせわしなく鳴る呼鈴の音もうちにおうとる。『これは大事なことやで、よお考えなあかんで』って電話が一生懸命訴えとるような気がするんや。そや、これからこの電話であんたにも毎日電話したるわ。」

その言葉通り、姉は毎日のように私に電話をよこした。姉からの着信音には黒電話のジリリリリという音を登録しておいたのですぐにそれと分かった。電話の内容は今日の昼食の内訳やら東京と関西のテレビ番組の違いやら、ほとんどがたわいもないことばかり。慣れない都会暮らし、知り合いも少なく会話に飢えていたせいもあるのだろう。毎日何をそんなにしゃべったのか、今となってはほとんど思い出せないが、ただ1つ鮮明に記憶に残っているのは姉の口から例の「通り魔」の話題が出たときのことだ。

「なんや最近このあたりに通り魔がでるゆうてえらい騒いではるわ。聞いた話やとその通り魔には変な性癖があってな、ターゲットの部屋に侵入して首絞めて殺した後に部屋を掃除していきよんねんて。床や机だけやなくて、台所のコップや皿までピカピカ。現場には髪の毛一本、指紋のひとつも残っとらんから警察もなかなか捕まえられへん。几帳面な変態やで。ダスキンも真っ青や。やっぱ東京って怖いとこやな。」

姉は冗談めかして笑っていた。

ジリリリリ

その日の電話はずいぶん遅いな、と思った。飲み歩く友達でもできたのかしら。そんなことを思いながら出た電話の先には震える大家の声があった。

「○○さんの親族の方ですか。たった今、、○○さんの部屋に入ったのですが、、とにかく、、すぐに来ていただけませんか。」

大家は詳しくは何も言わなかったが、私は事情を察した。姉の緊急連絡先は私だ。そしていま大家が姉の部屋から私に電話をしている。姉の身に何かが起こった、そうとしか考えられない。私は最終の新幹線に飛び乗った。

私が到着したときには既に警察の現場検証が始まっていた。姉の部屋に通された私が目にしたのは、変わり果てた姉の姿とうろたえる大家、そして異様なほど整理整頓された部屋の様子だった。

手口からみて最近騒がれている通り魔の犯行とみて間違いないらしい。警察の懸命の現場検証でも部屋に遺留品は見つからず、部屋の指紋は姉のものを含めすべてきれいに拭き取られていたという。目撃者もなし。開けっ放しのドアから明かりが漏れているのを不審に思った大家が部屋をのぞかなければ発見はもっと遅れていたかもしれないとのことだ。最後に警察から聞かされた言葉は今思い返してもぞっとする。

「こういう犯罪を犯す人は変質者でもあり同時に高い知能も持っている。だから味をしめて何度も犯行を繰り返す。現場に行った君も顔を見られていないとは言えない。十分注意することだね。」

***

壁のカレンダーに目をやり、あれからもう2週間も過ぎたことに今更ながら驚く。姉の死を受け入れることができず抜け殻のように過ごしてきた日々。しっかりしないと。もうそろそろ自分を取り戻さないといけない頃だ。

「分かりました。明日にでも向かいます。姉の部屋を見ることで私の心も整理できると思います。」

大家さんからの電話を切る。不思議なものだ。立ち直るきっかけをくれたも姉の好きだった黒電話の「ジリリリリ」の音なんて。姉はどこかで私を見守ってくれている。そんな気がしてならない。ふと、姉の言葉を思い出す。

『これは大事なことやで、よお考えなあかんで』

その言葉が何度も何度も心にこだまする。

いろいろな人の言葉、黒電話の音、、次々と頭の中でつながっていく。
私はすべての真相を理解した。

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解説 (文字を反転させて読んでください。下に行くほど真相に近づきます。)


妹は黒電話がこの事件の真相を教えてくれることに気がついたのです。

大家さんは死体を発見してすぐに姉の黒電話から妹の携帯に連絡を入れています。
それが犯人が去った後であれば黒電話には大家の指紋が残っていなければなりません。
ところが現場検証では部屋からは指紋が全く発見されなかったのです。
その指紋は誰が拭き取ったのでしょう。

それができるのは大家しかいません。
つまり大家がこの通り魔の正体なのです。

さらに妹は大家がこの電話に触ったことを知っている唯一の人物です。
つまり大家は妹も殺そうとして部屋に呼び寄せている可能性があります。


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