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素の数

27日付の米紙ロサンゼルス・タイムズは、1とその数字でしか割り切れない「素数」について、カリフォルニア大学ロサンゼルス校(UCLA)の数学者が8月に1297万8189ケタというこれまでで最大の素数を発見したと報じた。

というニュースがmixiニュースにピックアップされていました。数学のニュースがトップページに出るということ自体なかなか珍しいですね。数学と無縁の人にとっては一読の後0.5秒で忘れ去られるようなニュースですが、でもひょっとしたらこれは数学界を揺るがす大発見なのでは?と無理やり胸ときめかす人もいるかもしれませんね。身も蓋もなく言ってしまえばこの発見はせいぜい整数論の教科書の脚注に1行掲載されるかされないかくらいの意味しかありません。すでに紀元前にユークリッドという数学者が「素数という数が無限にたくさん存在する」ということを数学史に残る見事な手法で証明しています。ということはどんなに大きな素数を見つけてもそれは終着点ではありえないわけで、「最大の素数」を見つけることに数学的な価値はほとんどないのです。

しかしこのニュースが記念碑的な意味を持つのは素数はその性質上、数が大きくなればなるほど存在する確率は極めて薄くなっていくからです。1000万桁を超える整数の中に素数を見つけだそうという作業は、サハラ砂漠に落とした100円玉を探す作業より、あるいは「さみしいので今から会えませんか」という人妻からのメールの中に本物を見つけ出そうとする作業よりさらに何百万倍も難しいものなのです。さらに本質的な点は、ある数が「素数であるかどうか」を判定すること自体が数が大きくなればなるほど飛躍的に難しくなること。素数かどうかを判別する最もシンプルな方法はその数より小さい数すべてで割り切れるかどうか調べることなのですが、それを巨大な整数に適用しようとすると現代の最速のコンピューターを使っても地球の寿命より長い時間がかかってしまいます。今回の発見は比較的素数の判別がやりやすい特定の形の素数に候補を絞り何台ものコンピューターを駆使して基本的にはしらみつぶしに調べることによって得られたものだそうで、上記の2つの困難を乗り越えた稀有の例ということになるでしょう。そういう意味では数学者にこのトピックをふれば、どこかの農家でエロい形をした大根が収穫されたというニュースを聞いたときの大塚さんくらいのリアクションは得られると思います。

一見ランダムのように見えるものの中に現れる規則に美しさを見出すのは数学の大きな魅力の一つですが、素数の持つ魅力はその全く逆。小学生でも、いやおそらく数という概念を持つ他の星の生命体であっても分かる単純な規則にも関わらず、先に進めば進むほどその全体像がつかめなくなるのです。ランダムであるであるが故の美しさ。人智を超えた神秘を感じないわけにはいきません。

今日の一言
今日の飲み会、素数の話題はNGで
(数学科のコンパでのリアルな会話)

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