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技術の進歩と芸

何日か前の記事ですが、元F1世界チャンピオンが「最近のマシンは進歩しすぎていて、誰が運転しても同じだ」みたいなことを言ってましたね。コンピューター制御などによりマシンの性能がドライバーの技術を追い越してしまい、駆け引きやチームワークではなくマシンの良しあしだけで勝敗が決定してしまうのだとか。F1に関してはまったく無知ですし、この意見にも多少言いすぎのところはあるのだとは思いますが、確かにそのようなことは起こりうるのだろうなと興味深く読んでしまいました。

似たような話をひとつ。かつて舞台芸で「読心術」という定番の出し物があったそうです。演者が舞台上で目隠しをし、助手が客席に降りて、お客さんから何か物を借ります。「これがいったい何か分かりますか」と助手が問うと舞台上の演者は「それは財布です」と答えます。

「さて、それはどのような財布ですか。」
「茶色で折りたためるものですね。」
「では、材質はなんでしょう。」
「皮です」

助手の質問に演者は正確な答えを返す。

実はこれにはからくりがあって助手は演者への質問の中にその問いの答えをさりげなく散りばめているのです。たとえば上のやり取りでは「いったい」、「さて」、「では」といったキーワードがその問いの答えを示す暗号であるといった具合です。これは単純な例ですが熟練した演者の手にかかるとほんの短い言葉でかなり多くの情報をやり取りすることができたらしく、中には職人芸の域に達するものもあったとか。これを題材にした有名な推理小説もあります。

しかしいまやこの芸はすっかり廃れ、それこそ小説の中くらいでしかお目にかかれなくなってしまいました。その理由はいたって簡単、通信機器の発達です。隠しカメラやマイクを使えばこんな現象は素人でも簡単に起こせてしまう。実際にそれを使用していなかったとしても、その可能性が誰の頭にもよぎる以上、もはやこれは「不思議」として成立しなくなってしまったのです。

技術の進歩がかつてはあったはずの興をそいでしまう。芸をするものにとって一つの脅威かもしれませんね。かつては手品を見た観客がやや負け惜しみ気味に言う定番のセリフは「あれは鏡を使ってるんだ」だったそうです。それに代わる次の定番はこうなるに違いありません。

「あれはコンピューターを使ってるんだ」

今日の会話
「でも時々ボール落してるけど、、、」
「それはマイクロソフトだからだよ。」

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