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好きな言葉 (その7)

KISS = Keep it simple , stupid.

模試やテキストの作成に携わると、他人が作った数学の問題を目にすることが多くなります。それを観察していると面白い事実に気付かされます。数学の問題の難易をいつも的確に判断できているはずの先生が、いざ自分で問題を作るとなったときに必ずしも的確な難易の問題を作るわけではないのです。客観的に見ればどう考えてもひねりすぎていたり、難しすぎたりする。でも不思議なことに作った本人だけはそうとは感じていないのね。

これは決して誰かを非難しているわけではなく、こういう傾向が程度の差はあれ、誰にでもあるということを言いたいのです。かくいう僕自身も何度となく経験したことなので、そうなってしまう理由はよく分かります。問題を作るという作業に没頭する間にいろいろなことが自分の中で知らず知らず消化され、本当は難しいことが難しいと感じられなくなる、ある種の感覚の麻痺が起こります。そしてそこを出発点にしてまた問題を深めようとしてしまう。それを繰り返すうちに自分が思っているよりもずっと深いところに進んでしまい、本人はそのことを自覚できなくなってしまうのね。じわじわ熱くなっていくお湯に浸かっていると、相当な熱さになってもそれに気がつけなくなるのによく似ています。

全く同じことが実はパフォーマンスを作っていく過程でも起こりえます。あんなこともできる、こんなこともできる、もっと面白くしよう、もっと面白くしよう。そうやって膨らませていったとき、最終的にできたものが全く人に受け入れられないものになってしまっているという悲しい現実。これはひょっとしたら物を作る人が陥る共通の落とし穴なのかも。

自分のやっていることを客観的に見るのは非常に難しい。だから僕は自分の満足のいくものができたと思ったときこそ、この言葉を自分に向けて問います。

KISS = Keep it simple , stupid.

日本語にすると「物事は単純で愚かな状態にしておけ」、あるいは「もっと簡単にしなさい、この馬鹿ちんが!」(金八風に)といったところでしょうか。

本当にその設定は必要か。本当にその動きは必要か。無駄がないか、同じことが繰り返されていないか。一旦出来上がったものを今度はひたすら削ぎ落としていく。面白いものを作ろうとすることとシンプルにすることは自分の立場からみたら一見相反することで、辛い選択を迫られることもあるのですが、それでも泣く泣く切る。そうして削いで削いでそれでも削ぎきれずに残るものが自分の表現したい本質であり、それは確かにいいものなんだよね。この作業こそ実は最も作り手のセンスが問われる部分なのかもしれない。よい問題もしかり、よいパフォーマンスもしかり。本当に素晴らしいものは驚くほど単純な形をしている。

きっと世の中には2種類の人間がいます。物事を単純にする人と、物事を複雑にする人。願わくば僕は前者でありたい。

今日の一言
創作とは足し算ではなく引き算である

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