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落し物

先日名古屋の地下鉄に乗ったときの話。最初は気がつかなかったのですが、僕が座っている席のすぐ前の床に何か落ちている。よく見るとそれはボールペン、しかもただのボールペンではなく三色ボールペンです。学生か誰かが落としたものなのかな。テーブルの上に置いてあれば見慣れた物が、地下鉄の車内の床に落ちていると何か異質な物体に見えるから不思議なものです。

で迷ったのはですね、例えばこれが財布だったり切符だったりするなら当然駅員さんを呼び止めて「これ落ちてましたよ」って渡すのが筋です。しかしボールペンにそこまでする義理もない。かといって拾ってポケットにしまってしまうにはちょっと心が痛むでしょ。まだ普通のボールペンだったら「あり」なのかもしれないけど、三色ボールペンだと「なし」なのよ。この余分な贅沢感。三色ボールペンの落し物としてのポジションはかなり微妙だよな。

でまあ、結果的にどうしたかっていうと完全に無視を決め込んだのですよ。気づかぬ振りの知らぬ顔。しかし如何せんやけに人目にとまる地下鉄の床の三色ボールペン。その目の前に僕が座って本読んでいるのだから、まあ当然誰もが僕が落とし主だと思うわね。心ある人が近寄ってきては三色ボールペンを拾い上げ、「これ落とされてますよ。」って言ってくるわけだ。そのたびに「いや、すいません、僕のじゃないんですよ。」ってちょっと気まずい感じになる。でもそのあと人間の行動がなかなか面白いね。しばらく持て余すようにボールペンを眺めた後、おもむろに最初と全く同じ状態にボールペンを置いて去っていくのよ。まるでしてはならないことをしてしまったみたいな感じで。多分みんな考えてることは僕と同じなんだろうな。

車内の微妙な違和感をよそに床の上の定位置を占有しつづける三色ボールペンはどことなく文学的です。丸善の本棚に置かれたレモンのその後はきっとこんな感じだったに違いないね。

今日の一言
一日三色ボールペン

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