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僕はパパを殺すことに決めた

奈良県で高校1年生が自宅に火を放ち母子が犠牲になった事件。医学部を目指すエリート学生が起こした事件として当時はワイドショーでも大きく取り上げられ、その動機についてさまざまな憶測が飛び交いましたが、例によってその解明は十分なされないうちに次々に起こる事件の波に洗われ人々の記憶から消え去っていきました。最近この事件の真相に迫った「僕はパパを殺すことに決めた」(草薙厚子)を読む機会がありました。プライバシー保護の観点から法務省から勧告を受けた問題作で書店からは姿を消してしまいましたが、京都府の公立図書館では今でもちゃんと借りることができます。

ページのほとんどが少年、その父親、そして少年を取り巻く人の肉声であるところの供述調書によって構成されています。もちろんそこに著者の草薙さんの視点も加わってきます。1つの出来事に対する何人かの証言があり、それが微妙な食い違いを見せるところなどは芥川の「藪の中」を読んでいるよう。しかしそれを重ねていくうちに次第に報道から受けた印象とはまるで違う事件の像が浮きあがって見えてきます。読むほどに重さが増してくるような本でしたね。

学校の定期考査で英語の成績が平均点に足りなかった、それだけのことが父親への殺意を抱くきっかけになるなんて到底正常な心理には思えません。報道でもその異常性だけが殊更に強調されていたのだけど、供述によって浮かび上がってくる少年の生い立ち、家庭環境がそこに照らしあわされたとき、少年の行動を全否定することはとてもできない気になってくるんですね。

これは社会の特異点で起きたものではなく、僕がその空気を直に吸っている受験社会の扉一枚向こう側で起こった事件。何気なく取り扱っている数字がある生徒にとっては自分の生きている世界の手触りをすべて消し去ってしまうほどインパクトを持ってしまうことを僕らはきちんと自覚しなくてはいけない。偏差値やテストの点数だけがすべてではない、少なくとも人生を棒に振るほどのものであるはずがない。あまりの正論。この業界じゃ恥ずかし過ぎて誰も使わない言葉だけど、でもやっぱり誰かが言うべきなんだろうな。生徒に対してもその親に対しても。

今日の一言
がんばるな! 受験生

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