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好きな言葉 (その6)

黙っていたほうがいいのだ
もし言葉が
一つの小石の沈黙を
忘れている位なら

谷川俊太郎 「もし言葉が」より

谷川俊太郎さんは僕が最もあこがれる「言葉」の使い手ですね。学生時代に買った谷川さんの詩集を時々読み返すたびいろんな思いがこみ上げてくる。その中でも特に印象深いのがこの一節です。

雄弁こそが世界を動かすと言わんばかりに一分の隙もなく言葉をまくし立てる人がいます。会議なんかではそういう人が場の空気を支配することが多い。僕が会議が嫌いなのは、その雰囲気にどうしても馴染めないからです。言葉がただその場の空気を震わせるだけに消費され、その残骸が薬莢のようにパラパラと会議室の床に散らばってるような気がしてしまう。

一方で舌足らずな、でも心に結晶した思いを搾り出すように発せられる言葉がじわりと胸に沁みることがある。

アイスクリームのおいしさの秘密は中に含ませている空気にあるそうです。空気を全く入れないでぎっしりと固めてしまうと、アイスクリームを口に入れたとき口の中でじわっと広がる感覚がなくなってしまう。するとどんなに素材が良くてもあの幸せな甘さは生まれないのだとか。「言葉」と「沈黙」もきっとそういう関係なんじゃないかな。無色無臭の沈黙が言葉の味を引き立てる。本当に大切なことを伝えるとき、人は言葉を並べる代わりに、言葉を散らすのですよ。ぽつり、ぽつりと。言葉が心の中でゆっくりと溶けて広がっていくように。

適切なタイミングで発せられ、適切な余韻の中に置かれたたった一言が人を笑わせたり感動させたりする、それは本当に素敵な言葉の力だなって思う。僕はそんな言葉が大好きです。谷川さんの詩がそういう力を持っているのは、逆説的だけど、谷川さんが言葉自体の無力さを、沈黙を忘れた言葉の傲慢さを、誰より知っているからだと思うのです。

今日の一言
心は言葉に宿るのではなく、言葉と言葉の間に宿る

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