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好きな言葉 (その5)

また夢になるといけねえや

落語「芝浜」の有名なサゲ。

腕はいいのに酒に溺れて仕事をしなくなった魚屋。毎年暮れには借金取りが入れ替わり立ち代り訪れるほどの貧しい生活。ところがその魚屋がある日芝浜で50両の入った財布を拾う。それを家に持ち帰って妻に渡し、これからは贅沢ができるぞと大喜びで酒を飲んで寝てしまうのだが、眠りから覚めて妻にそのことを尋ねても妻は知らないという。夢だったと悟った男は心を入れ替え、酒をぴたりと断ってまじめに働きはじめる。もともと腕のよかった職人、瞬く間に評判が上がり、いつしか借金もなくなり蓄えを作るまでになる。そんな3年目の大晦日。妻が家の奥からあの日の50両の入った財布を持ってきて、あれは男がまじめに働くようになって欲しいという一心でついた嘘だったのだと告白する。そしてあの日以来男が二度と口にしなかった酒を持ってきて彼に勧めるのである。感極まった男がその酒を飲もうとするがはたと手を止める。やっぱりやめとこう。

その後に続くのがこの僕の大好きな決め台詞。これに畳み掛けるようにお囃子が聞こえてくる。数ある噺の中でも最高にかっこよく粋な終わり方じゃないかな。この一言に男のすべての思いが凝縮されてしまう。

僕が一番好きな「芝浜」は古今亭志ん朝さんが演じているもの。今では録音しか残っていないのだけど、今日久々に聞き返して見て、やっぱり途中で涙が止まらなくなってしまいました。上に書いたあらすじではこの噺のよさは1%も伝わりません。是非実際に聞いてみてください。ここに描かれる女性像を見たら、昔の日本は男尊女卑だったなんて絶対うそだと思うはずです。どんなに虚勢を張ったって、最終的に男は女には絶対勝てないんだな。今も昔も変わらずね。

ちなみに今日「芝浜」を聞きなおしていたのは、完全引退をすることになった落語家三遊亭圓楽さんの記事をたまたま目にしたから。圓楽さんが引退を決意した2月25日、高座で演じた「芝浜」が結局最後の演目になってしまったんですね。圓楽さんは笑点の司会としてのイメージが強いけど、この人の人情話は本当に素晴らしい。「芝浜」と並ぶ人情話の名作「鼠穴」「名工浜野矩随 」を高校生の時にテープで繰り返し聞いていましたが今でもそのストーリーの情景がありありと浮かぶほど記憶に残っています。

たった30分の中で人間を描き、人生を語ってしまう。しかも笑いの中でね。古典落語には芸のすべてが詰まっているような気がします。

今日の一言
小学生には英語より落語を

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