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好きな言葉 (その3)

お前のおかげで いい人生だったと
俺が言うから 必ず言うから

さだまさし「関白宣言」から。

「関白宣言」の歌詞は泣きオチの教科書みたいなもんだね。1番, 2番で散々引っ張って最後の最後のこの言葉。この歌はすべてこの一言のためにあるんだって分かる。これだけみたらどこにでもありそうな台詞、せいぜい「ああ、ちょっといい言葉だね」くらいのものでしょ。でもこの"普通の言葉"がこの歌の中で歌われるとき圧倒的な輝きを放つのは、その上に積み重ねられた「物語」の重みなんだな。沢田知可子の「会いたい」では絶対泣きたくないけど、この言葉の前では素直に泣いてしまいそうになる。いや、ここで泣かない人がいるなら教えて欲しい。

自分の愛する人が突然交通事故で死んでしまったら、誰だって悲しい。空港で倒れた女の人を抱きかかえて「助けてください」って叫ばれたら、確かに心が動く。でもそれを「感動」って言いたくはないんだな。それでいいのなら「物語」っていったいなんなのさ。普段何の気もなしに使っている、当たり前で馬鹿みたいに陳腐な言葉。「ただいま」とか「またね」とか「ありがとう」とか。あるいはほんの一瞬の沈黙とか、髪をかきあげた仕草とか。それがある文脈の中に置かれたとき、人の心の根底を揺さぶるほどの力を持つことがあるの。それを成し得るのが「物語」の力であり、僕が感動したいのはそこなのよ、そこ。

この歌がオンエアされていた当時、この歌は女性蔑視だといって女性団体からの抗議がものすごくあったそうです。「俺より先に寝てはいけない」とか「浮気は覚悟しておけ」とかいう言葉の上っ面だけ捕らえたら、まあそうなるわね。今でもこの歌を前時代的な男の歌と勘違いしている人って多いのかも。ちゃんと読めば、この歌がどれほど女性への敬意に満ちているかが分かるはずなのにね。歌詞を味わうって単純なことがどんどん難しい世の中になってるのかも。たいていの歌番組は大切な歌詞をぶつ切りにしたハイライトだけを流す。セールスに結び付けるには歌詞の瞬間、瞬間に耳あたりのいいキャッチコピーを並べないとダメなんです。正論を声高に主張する政党のマニフェストみたいになんとなく薄っぺらい。

たった一つの言葉に命を吹き込むために、他の言葉が丁寧に「物語」を紡ぎあげる。そんな歌がちゃんと鑑賞され、評価される世の中であって欲しいな。

今日の一言
最近の高橋ジョージを見てると「ロード」ではもう絶対泣けない

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