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仮定

「PならばQ」という推論において、Pにあたる部分を「仮定」という。「仮定」はその後のQにあたる「結論」とセットとなるもので、言葉としてよく似ているが「推定」とは意味が違う。

仮定は推論の出発点となる言及なので、必ずしもそれ自体が「正しい」言及である必要はない。「僕の孤独が魚だとしたら」(伊坂幸太郎)、「もし僕らのことばがウィスキーであったなら」(村上春樹)、「もし威勢のいい葬儀屋がいたら」(ドリフ)などどれも非現実的であるが印象深い仮定である。

「PならばQ」という推論が否定されるのはPが正しいのにQが間違っているときに限る。例えば「私が鳥だったらあなたのもとに飛んでいくのに」という言及に対して、「嘘をつくな、おまえ鳥じゃねえだろう」と返すのは正当な批判とは言えない。「嘘をつくな、おまえが鳥だったら、露天風呂の女湯に飛んでいくだろう」というなら正当。

仮定そのものが間違っている場合はその推論は常に正しいことになる。例えば「1+1=3ならば雪は黒い」は(意味はないが)正しい推論である。「僕がロミオなら、君はジュリエットだ」と手を握りながら見つめあう若いカップルがいたとしても、たぶんその男はロミオではないだろうから嘘を言っていることにはならない。そっと見守ろう。