小さくないほう
すずめのお宿に招待されたおじいさんが帰ろうとするとすずめがこう言いました。
「幕の向こうにつづらが2つあります。どうぞお好きなつづらをおっしゃってください。それをお土産に差し上げます」
意地悪おじいさんは言いました。
「じゃあ大きいほうのつづらをもらおうかの」
すずめが幕を開けるとなんとそこには全く同じ大きさのつづらが2つ。
「残念ながら大きいほうのつづらはこの中にはありません。どうぞお引取りください。」
おじいさんよりよっぽど意地悪なすずめのお話。
このように2つのうち「大きいほう」といってしまうとそれが存在しない (数学的に言えばwell-definedされない) ことが起こりうる。ではここでおじいさんはどう言うべきだったのだろう。その答えは「小さくないほう」である。この表現は2つのつづらが異なる大きさのときは当然「大きいほう」と同じ意味であるし、仮に全く同じ大きさだったときはどちらにも当てはまるので、どちらをもらっても(あるいは両方もらっても)構わないという理屈である。
数学で使われるMax(a,b)という記号は「aとbの2数のうちの小さくないほう」と定義される。最初に聞いたときはどうしてこんな回りくどい言い方をするのか理解に苦しむのだが、決して嫌がらせではなくそこにはいちおう大人の事情があるのだ。